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2010-07-15

子どもを失った母親の「告白」

告白2



 公開中の話題の映画「告白」、観てきました。
 淀長さん風に言えば「何とまぁ怖いですね、恐ろしいですねー」ですか。

 のっけから始まる松たか子扮するヒロインの担任の告白。
 場所は終業式を迎えた中学1年の教室。
 告白を聞かされるのは、春から2年になる中坊の男女たち。
 でも、誰も担任の告白など、まともに聞いていません。席のあちこちで私語をささやいたり、携帯画像をのぞたり、あらぬ方を見ていたり…。
 でも、担任の先生は、そんな生徒たちの態度にお構いなしに、どんどん話を進めていきます。

 担任の話など聞いていないように見えた生徒たちが初めて担任の話に反応したのは、担任が「私は今学期で教師を辞めます」と語った時です。
 さぁ、ここから、この女性教師と、ある特定の中坊たちのバトルがスタートします。
 
 この冒頭の告白で、なんらの感情を見せることなく淡々と、まるで授業でもしているかのように語る松たか子の表情が、喜怒哀楽を見せていないだけに恐ろしおます。この先生の専門学科は化学という設定なので、渦巻く怒りを抑えて理性的に話しかけるようにできたかもしれません。 


 ところで…。
 中学、教師と生徒、少年犯罪、少年法、シングルマザー、モンスターペアレント、親の離婚、家庭崩壊、ひきこもり、家庭内暴力、教師の自信喪失、そしてHIV問題、危機管理の脆弱さ、ちょっと挙げただけでも、この映画には今日的な根源の深い問題がこれだけはらんでいます。

 この映画を観たある友人が「これを新藤兼人が監督してたら重い映画になってたやろな」というような意味のことを言ってましたが、まぁ当たってるかも、ですね。
 新藤監督にも過去に家庭内暴力をテーマにした映画(「絞殺」1979年度)がありましたが、ホンマ、正面きって取り組んだら中学生の殺人の映画なんて、テーマを聞いただけで重苦しい雰囲気でおます。「いや、そこを切り込んで取り組まんことには…」とまじめな人はおっしゃるかもしれないけれど、そんなに四角四面に考えなくても…というのがボクの考えでおます。

 「告白」を監督した中島哲也さん、そこんとこ、よく分かっているようで、以前に観た「嫌われ松子の一生」でもそうでしたが、正面からっていうのをわざと外しているんですよね。まともに描いたら昔ながらのある女の悲劇となって重いだけしかないと判断したのか、「嫌われ松子の一生」では突然、ヒロインが花柄のフレームの中で踊り始めたりしてCM映像出身の作家らしく、随分チャラけた中でくっきり、アホな女の末路を描いていました。

 やはり、「告白」でも突然、生徒たちがダンスをするショットが出てきますが、これはクラス替えもなく2年に進級した生徒たちを受け持つことになった男性教師(岡田将生)の希望的観測のイメージショットでおます。
 この教師のにいちゃん、ひと昔もふた昔も前にゴロゴロしていたような熱血教師で、最初のホームルームで何でも相談してくれ、僕は君たちの兄貴になりたいんだとか言って生徒の心をつかもうと必死になっていますが、そんなこと言われてもね、生徒たちはシラけるだけですよね。そこんとこのギャップが読み取れないKY教師なのでおます。
 このあたり、生徒と教師とに距離感があることを中島監督は軽く皮肉っていますな。

 演じる岡田将生自身が教師というより、まだ高校生でも通るような若い俳優でおますが、このにいちゃん先生、引きこもりになった生徒の自宅を何度も何度も、生徒の親に拒否されても、しつこく家庭訪問を続けます。この生徒の引きこもりに松たか子先生が大いに関係しているのですが、にいちゃん先生のしつこい家庭訪問も実は松たか子先生が関係しています。
 その揚げ句、にいちゃん先生は教師として自信喪失してしまい、しばらく自宅休養となってしまいます。いやはや、シニカルな展開でおますが、熱血教師としてのこの結末は現実にありそうですもん。

 この映画、13歳以下の児童・生徒が刑法に触れる罪を犯しても刑法犯として処罰されないという規定がある少年法という壁を、あらゆる知識、人脈を捉えて乗り越え、罪を犯した少年に対して法律以上の処断を下す母親の復讐劇を通して、少年法がはらんでいる矛盾を観客に投げかけています。
 と、こう書けば、いかにも重々しい感じですが、映画は重々しい雰囲気ではなく、復讐を遂げた松たか子に「ばかばかしい」とつぶやかせ、幕切れ、「な~んてね」という軽い一言をはかせています。

 この映画を観ていて、ボクが一番おもしろく感じたのは、世の中、危機意識を何にも持っていない人が多いということでおます。
 ヒロインはHIVに感染し、エイズが発症して死んだ高名な教育学者との間に娘をもうけ、2人 の話し合いで結婚せず、シングルマザーとして娘を育ててきた教師ですが、生徒たちにそのことを打ち明けた時、エイズと聞いただけで生徒たちがあわてふためくシーンが出てきます。

 のちにヒロインは、この時のことを「正しい知識も持ち合わせず、ただエイズと聞いただけであわてふためいて…」と言っていますが、平和ボケしているわれわれへの批判ですね、これって。
 エイズだけでなく、日常のささいなことに至るまで、こうすればああなるだろう、こうしたら周囲に迷惑はかからないだろうというような想定ができない人、自分の頭の中でイメージできない人の何と多いことか! 日々、実感しています。
 危機意識って、災害時の専門用語じゃないですよね。

 

 

 
 
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