2010-06-20

京都観光案内―番外篇

山中貞雄顕彰碑100711120111


 京都の中京・七本松通にある大雄寺に眠っている映画監督は加藤泰ばかりではおまへん。
 山中貞雄も、その1人でおます。

 山中貞雄―加藤泰の叔父さんでおますな。加藤泰の母親の弟さん。
 生前、といっても今から70年以上も前のことでおますが、普段の山中貞雄がどんなおっちゃんであったか、加藤泰の妹さんが健在なので、昨年の秋、縁あって山中貞雄研究家の友人に付き添ってインタビューした折、その横顔をちょこっと知ることができました。

 さて、大雄寺の小さな墓地の一角に山中家の墓碑がおます。そこは加藤泰の墓碑から少し離れたところでおますが、その墓碑の近くに山中貞雄の墓碑がおます。それが先日のブログの冒頭に掲げた画像でおますが、墓碑と同時に山中貞雄の「陸軍伍長なんちゃらかんちゃら…」と刻まれた顕彰碑が経っています。それが、今回の画像でおます。

 墓碑の背面に戒名が記されています。
 「初代 至道院殉山貞雄居士」

 戒名というのは、亡くなった人があちらの世界で使用するあちらの世界用の名前で、それはこちらの世界で主に僧侶が亡くなった人の人となりを圧縮して命名するそうですが、山中貞雄の戒名にもなにやら人となりが込められていて、殊に「殉」の文字に惜しまれた死への思いがうかがうことができます。

 そんな山中貞雄の、今は失われてしまったとされている映画について、意外なことを聞きました。
 映画の題名は「磯の源太 抱寝の長脇差」(1932年、寛寿郎プロ)でおます。

 


 意外なことに山中貞雄監督の第1回監督作品「磯の源太 抱寝の長脇差」の話に、この山本晋也監督がかかわっているのでおます。

 昨年秋、NHKで放送された「天才監督 山中貞雄」という特集番組で、晋也監督が山中貞雄へのオマージュとして自ら無声映画化した同作品が紹介されていましたが、実は晋也監督、フィルムが失われたとされている山中貞雄の「磯の源太 抱寝の長脇差」を観たというのでおます。
 もちろん、リアルタイムではおません。

 「ほんまかいな?」と眉に唾をつけるような思いで、じゃ、山本監督に真相を聞いてみようと、ある奇特なご仁が出てきて今年初め、そのご仁は山本監督から、その話を聞いたそうです。
  
 ご仁の話によると、およそ20数年前、東京・福生市にあるフィルムコレクターのおっちゃんが住んでおり、山本監督のデビュー作の映画を所持しているというので、山本監督は訪問したそうでおます。同行したのが渡辺護監督だったとか。

 山本晋也、渡辺護といえば、60年代後半の成人映画(いわゆるピンク映画)界の大御所でおます。
 調べてみると、ともに初めて監督したのが1965年、山本監督は「狂い咲き」、渡辺監督が「あばずれ」という作品になっています。

 さて、両監督のデビュー作品はあったのですが、もののついでかどうか、その時、おっちゃんから「こんなのもある」と観せられたのが「磯の源太 抱寝の長脇差」だったというのでおます。
 山本監督によれば、当時、山中貞雄に特別関心があったわけではなく、主役の嵐寛寿郎に対しても「若いアラカン」という認識はあったそうで、フィルムは35ミリ、巻のかけかえもあり、上映時間は1時間もなかったそうでおます。

 今から20数年前というと1980年代後半、ちょうど年号が昭和から平成に変わる直前くらいになります。
 山本監督が観たという作品が「磯の源太 抱寝の長脇差」であるなら、そのころまで、ないとされていたこの作品が確実に存在していたことになります。
 フィルムコレクターのおっちゃんは、その後、89年にあちらの世界へ引っ越したそうで、おっちゃんが蒐集した膨大な数のフィルムは映画研究家らの調査が入り、そのどさくさにまぎれたのかどうか、「磯の源太 抱寝の長脇差」はどこへ行ってしまったのか、文字通り「失われた」状態のままになっているようです。

 現存していたという「磯の源太 抱寝の長脇差」が製作当時の発火性フィルムのままだったのか、それとも後に発火を防ぐために焼き直しされたフィルムだったのか。そもそも、どこへ行ってしまったのか? あるいは、そうと気づかず、既にジャンクされてしまっているのか?

 21世紀に入った今日でも、失われてしまったとされる戦前の日本映画の全巻、ほほ全巻、あるいは断片で発見されるという「奇蹟」が起こっていますから、今後、どこかの倉庫で眠っていた…という事件がないとも限りませんよね。

 「磯の源太 抱寝の長脇差」今、いずこ?? でおます。

 
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Re: Dr.

> 申し訳ありません、ピコrッロ・フランコと申します。
> 日本語からイタリア語まで、小津安二郎の本を翻訳してみます。
> 山中貞雄の戒名ぼ読み方を御存知ですか。

ピッコロ・フランコ様へ

 返信が遅くなり、申し訳ありません。
 コメントをいただいていたことに気付かなかったからです。

 おたずねの山中貞雄の戒名ですが、『初代至道院殉山貞雄居士』は『しょだいしどういんじゅんざんさだおこじ』と読むと思われます。
 この戒名は数年前、山中貞雄の墓参をした折、墓石に刻まれていた文字を書き写してきたものです。

 以上、簡単ですが、ご参考になれば幸甚です。    青山彰吾
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