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2010-03-23

母を求める世之介は「人間失格」

失格人間


 太宰治の作品は、本人がこの世とおさらばして60年経ってなお、愛読者が多いのは知っていますが、「今ごろ、何で太宰?」と思いつつ、公開からかなり時間を経て映画館へ駆け付けると、この映画、西鶴の世之介さん、つまり、「好色一代男」でおました。

 世之介は少年期に乳母の手ほどきで女性初体験を済ませて以来、何人もの女性遍歴を重ね、ついには女護が島を目指して船出していきます。
 映画「人間失格」の主人公、葉蔵(生田斗真)は、中学生の時、同居するいとこの女性(馬渕英俚何)の泣き顔を見て以来、女性遍歴を重ねていきます。

 ただし、世之介と決定的に違うのは、世之介が最高の女性を求めて、あっけらかんと女性を通して社会勉強していくのに対し、葉蔵は何人もの女性と出会いながらも社会的な経験、知識は得ることなく、出会った女性の中に「母親」を求めていたという違いでおます。



 映画では詳しく描かれていませんが、映像、登場人物の言葉などから推測すると、太宰治をモデルにした葉蔵は東北の大地主の次男坊、幼少期に母親を亡くしているようでおます。
 いとこの女性(葉蔵の肉親の誰かと肉体関係にあるらしい)や家令(石橋蓮司)以外、葉蔵の父親も兄も登場しませんが、父親はどうやら東京で国会議員をしている雰囲気でおます。

 やがて、成長した葉蔵は絵の勉強のため、東京に遊学します。住まいは父親が東京に建てた豪邸。やがて、父親は議員を辞し、東京の豪邸を売却したため、葉蔵は学生相手の下宿屋で侘び住まい。
 働かなくても食える高等遊民(戦前の日本には、こういう結構な身分の人がおりました)の葉蔵は、さまざまな女性と出会っていきます。

 東京に出てきた葉蔵を取り巻く女性たちに扮して、いろいろな女優が出てきますが、これはちょっと最近の日本映画にない「女優競演」でおます。

 バーのマダムの大楠道代。
 カフエの女給の寺島しのぶ。
 たばこ屋の娘の石原さとみ。
 子持ちのキャリアウーマンの小池栄子。
 下宿屋の世話好きな娘の坂井真紀。
 薬局の後家さんの室井滋。
 東北の山間のおばさん、三田佳子。

 老若取り混ぜた女優競演でおます。
 
 葉蔵は一見、自分の居場所を求めて女性たちとの出会いを重ねているようですが、行動は衝動的、刹那的、性格は優柔不断、甘えん坊、自分ひとりではこの世の中を歩いていけない、全くの子どものままでおます。

 
 葉蔵が上京して以来、出会う女性たちのトップバッターに大楠道代、ラストランナーに三田佳子という実力派の女優を持ってきているあたり、憎い配置でおますな。
 これ、おっかさんのイメージでおます。

 大楠道代は、映画の冒頭から出てきますが、主人公とは肉体関係はおません。主人公が出入りするバーのオーナーですが、醒めたような眼差しでいながら、いつも主人公を見守っています。そして、なぜか、主人公が石原さとみと結婚するようになった時、親代わりのような顔をして結婚式に参列しています。

 三田佳子は、父親の死後、家督を継いだ兄の命令で放蕩三昧の主人公が東北の山奥に押し込められる生活を送るようになった時、その世話係のおばさん。三田さんには悪いけど、彼女が初めて画面に現れた時、ボクは一瞬、山ん婆が現れたのか? と目を疑いました^^ 
 山ん婆といえば、歌舞伎の「嫗山婆(こもちやまんば)」なんておますが、このおばさんには子も度はおまへん。そして、このおばさんの素性がかつては主人公の父親の愛人だったのでは? と想像させます。もちろん、映画ではそういう描写も説明もおませんけどね。
 肌の温もりを求めて主人公とおばさんがひとつ布団に横たわった時、おばさんは「母のない子と子のない母と・・・」と意味深な言葉を発します。
 
 極めつけは、カメラが俯瞰でとらえたイメージショットでおます。
 ボッテチェリの「春」の女神を思わせるようなうす衣をまとって横たわったおばさんの横に、主人公がまるで母親の胎内にいる赤ちゃんのような格好で横たわってます。

 主人公の葉蔵が、女性に母親のような想いを求めていたのがよくわかりまんな。

 葉蔵が最初に自殺する相手の田舎出のホステスを演じた寺島しのぶは3年前に夫が行方不明になり、自分の人生に希望のない地味なナリの女性でおます。それを演じた寺島しのぶはドンピシャでおました。
 ベルリン映画祭で日本の女優としては37年ぶり、3人目の最優秀女優賞を獲得しましたが、対象作品「キャタピラー」の監督、若松孝二が「モンペの似合う女優」と言ったように、平成の世に成人した人ながら、この映画を観ていても、つくづく、昭和の匂いを持った女優さんでおます。

 そして、もう1人、この映画で特筆しておきたいのは、ほんのチョイ役ながら東北の山奥の駐在さんの役で出てくる俳優でおます。
 かつて文学座に所属していた冷泉公裕でおます。随分長い間、顔を見ていなかったので「あれ、まだ俳優やってたんや」と、ボクにとっては懐かしい俳優でおます。

 
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