--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010-01-09

ミステリアスな「母なる証明」

母なる証明


 映画の冒頭、枯れ草に覆われた丘の道なき道を中年女が歩いてくる姿をカメラは捉え続け、打ちひしがれたような表情のおばさん、やがて、両手を振りかざして踊っているような身振りを見せ、よく見ると心なしか泣いているようにも見えます。

 このおばさん、いったい何やねん? というようなファーストシーンでおます。
 やがて、この不可解なファーストシーンはどこにつながっているのかが分かりますが、この作品、母と子のこわい映画でおました。

 観たのは昨年11月28日、場所は大阪・なんばパークスシネマでおます。
 韓国の地方都市に住む中年女のヘジャ(キム・ヘジャ)。彼女には知的障害を持つ一人息子のトジュン(ウォンビン)がおり、ヘジャにとって何よりもトジュンが大切でおます。
 トジュンは29歳になりながらも生まれながらの不幸を背負っているため、働くことはできず、遊び暮らしています。ヘジャは漢方楽店に勤めながら、時々、昔習い覚えた鍼灸治療をモグリでやっていたりする、しっかり者のおばさんでおます。

 そんな大切な息子に女子高生殺害の容疑がかかり、トジュンは逮捕されてしまいます。トジュンの記憶はあいまい。いつも母親に教えられているように両方のコメカミを指先でもんで記憶をたどっても、過ぎ去った昔の記憶は呼び起こせども、つい前夜の記憶がさっぱり出てきません。

 「トジュンに限って人殺しなんかするはずがない!」と、さぁ、ここから、おっかさんが大切な息子の無実を晴らすため、貧しく無知でありながらも彼女なりの八面六臂の活躍が始ります。

 と、ここまでの簡単なストーリーだけでも「母なる証明」という映画のタイトルはうなずけます。
 大切な息子に殺人の容疑がかけられた。「そんなバカな!」とばかり、息子が健常者でないことも手伝い、息子の無実を信じて何とか殺人があった夜のこと、被害者の女子高生の身辺などを母親が探っていくという、親の子に対する思い、行動が母親であることの証・・・。

 最初は非常に単純にそう思ったのでおますが、待てよ、ちょっと、そんな単純なことかいな? でおました。
 なかなか、どうして。これだけなら昔からたくさん作られてきた親の子に対する、ありふれた愛情ドラマでおます。
 ちょっと複雑なんですわと感じさせる要因が最後に用意されていました。

 女子高生殺しの真犯人が見つかり、トジュンは釈放されます。
 そして再び、以前のような平和な日常が戻ってきて、ヘジャは商店街の慰安旅行に出かけることになります。その出発の日、バスターミナルまで母親を見送りにきたトジュンが、バスの出発直前、母親に「落としていたらダメじゃないか」と、母親がいつも携帯している鍼箱を差し出します。

 ボクが、この映画をこわいと思った瞬間でおました。

 鍼箱を渡されて愕然とする母親。そんな母親を見つめる、いつもとは違う息子のまなざし。

 実は、この時、ヘジャは殺人現場の証人探しの過程で、廃品回収業のおっちゃんを殺害し、その住みかに放火しているんですね。殺人および現住建物放火の大罪を犯していたのでおます(殺害、放火して放心状態のヘジャがさまよい歩いているシーンが映画の冒頭シーンでおました)。

 トジュンがなぜ母親の鍼箱を持っていたかというと、拘置所から釈放された日、友達のジンテとその恋人に車で迎えに来てもらい、家へ帰る途中、興味本位で最近あった火事現場に立ち寄って、そこでトジュンは母親の鍼箱を見つけていたのでおます。

 女子高生殺人のほうは同じ知的障害を持つ青年の体液が女子高生の衣服に付着していたということで、その青年が真犯人として逮捕され、こちらは一件落着していますが、果たして・・・という謎が残っていることはヘジャに語った廃品回収のおっちゃんの証言から観客には読み取れます。
 果たして、トジュンは女子高生を殺していないのか? という謎でおます。

 そこへ、ラストの母親に鍼箱を差し出したトジュンのまなざしでおます。
 この時の、トジュンを演じるウォンビンの目が大変不気味で、意味深長でおます。
 トジュンは「落としたらダメだよ」と言葉に出して言っていたものの、その目は「おかあちゃん、わかってたんだよ」と言っているような表情でおます。

 この時の息子のまなざしが「母なる証明」というタイトルの本当の意味なんじゃないかと受け取ったのですが、これは深読みだったのでしょうか?

 
 
関連記事

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

外国の審査員受け狙いか?

深読み、というほどでなく普通は素直にそう観るでしょう。この映画は数年前から韓国映画界で続いている海外での各種の映画賞の受賞をねらって制作した作品の1つ。監督は海外の映画審査員にいかに分かりやすく受け入れてもらえるかを考えてこのような構成にしたのでしょう。なお韓国では母親の息子に対する溺愛は映画のテーマにならないほどありふれたもので、韓国人にはこの映画の意図は意外とわかりにくいです。

カンムルさんへ

 こんにちは。
 韓国事情、ありがとうございます。
 その映画が製作された国と、観るだけの国とでは受け取り方が違う点があって当然ですよね。

 また、いつでもご訪問ください。
プロフィール

青山彰吾

Author:青山彰吾
 日本映画を中心にしたコーナーです。
 ただし、取り上げる映画は偏っています^^
 
 

最近はこんなんです^^
ゲストのひと言
テーマ紹介
FC2カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

在庫の記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。