2009-09-22

長谷川伸シリーズ3

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 自分の想いの至らなさから最愛の女を死なせてしまった男が、旅先で死んだ女と瓜二つの女に出会った時、男はどうするか・・・。

 それを描いているのが「長谷川伸シリーズ」の第3話「中山七里」です。
 脚本担当は加藤泰、監督は原田隆司でおます。

 この作品、あまり映画化されてないですよね。
 今、思いつくのは1962年の大映京都作品だけです。雷蔵さんと玉緒ちゃんのコンビで、現在、テレビの2時間ドラマの演出をよくやってはる池広一夫が監督しとります。

 テレビ版では主人公の政吉を演じたのは、竹脇無我でした。同じこの年、加藤泰監督の松竹作品「人生劇場」で悩める主人公、青成瓢吉を演じていました。
 
 政吉と二世を誓い(今の若い人、こんな表現、知ってはりまっか?)ながら自死するヒロイン・おさんと、政吉が旅先で出会う瓜二つの女、おなかの二役を演じたのは梓暎子、60年代半ば、ピンク映画のヒロインから一般映画(こんな表現、あるかな?)の清純派女優に転身した女優さんでおます。

 ところで、このシリーズの音楽を担当しているのは木下忠司です。
 そして、「中山七里」で使用されている劇伴は、ほぼ全曲、木下忠司が音楽を担当した「藤純子引退記念映画 関東緋桜一家」(1972年、東映京都)のタイトル曲と劇伴のメロディーが使われているというオチがついています。

 本放送で、この作品を観て劇伴が流れた時、「ありゃ・・・!!」となりました^^
 
 異なる作品でも、音楽が同じ作曲家が担当している場合、悪くいえば、使用曲が次の作品に流用されることはよくあることですが、当時、鳴り物入りで大々的に公開された映画の音楽が、それほど時間を経ていない同じ年の作品に使い回されていたなんて、「いくらなんでも選曲、考えてくれよ~」ですよね^^
 

 政吉は江戸・深川の川並人足です。今、人足なんて表現は差別用語かもしれませんが、昔の言葉を持ってきたら、この表現しかありません。つまり、木場の材木運搬業者に属している職人さんですね。おさんは、料亭の仲居です。
 ともに貧しいながら、所帯を持って生きていこうと希望にあふれ、結婚資金を一生懸命貯めておりますが、職人世界の倣いで、喧嘩早いうえに仲間内の付き合いの遊びが過ぎて政吉さん、あんまり金が貯まっておりまへん。おさんにたびたび諌められています。

 そこで結婚資金を社長たる材木運搬業の旦那(戸浦六宏)に借りようとするのですが、社長さん、首を縦に振ってくれません。そればかりか、この社長さん、ひそかに、おさんを自分のものにしようと企んでおります。
 いつの世にも、人の持ち物に食指が動く輩って、いるもんですよね^^

 いよいよ、明日が仲間打ち揃って政吉とおさんの結婚という日の前夜、おさんは社長が来ている座敷に呼ばれ、結婚の資金は出してやるから今晩、俺と付き合えと迫られます。
 いくらなんでも、この社長さん、粋やないですよね。何も、わざわざ、結婚前日に、こんなことを言いださなくてもね。
 社長ばかりか、料亭の女将(小島恵子)や社長に飼われている岡っ引きの文太(菅貫太郎)まで、おさんを攻め立て、おさんはとうとう逃げ場をなくしてしまいます。
 この社長、きっと嗜虐趣味がおますねんやろね。目を付けた女を袋小路に追い込み、無理やりナニしてしまうシュチエーションに萌え~なんでしょう。

 翌朝、政吉の家に来たおさんに、政吉は明日が結婚という前夜、おさんが所在不明だったことを問いただし、事のてん末を知った政吉は激しく、おさんを責め立ててしまいます。
 おさんの言い分も聞こうとしない政吉の激昂、ののしりを前にして、おさんの行く所は、あの世しかありません。プイッと飛び出して行った政吉の留守に、おさんは自分の命を絶ってしまいます。

 それを知った政吉は、おさんの亡骸を前に男泣きに泣きます。そして、自分のおさんへの激しいののしりが女を死なせたことに大いに悔やみ、やがて、大いなる悔悟は怒りに転じ、その怒りの矛先は自分たちをここまで追いやった社長に向かいます。
 激情に駆られた政吉は社長宅に乗り込み、商売道具の鳶口で社長を惨殺、江戸から姿をくらましてしまいます。

 数年後、縞の合羽に三度笠の旅のやくざが、飛騨路を流れていました。
 政吉でおます。無理からぬとは言え、人一人殺して逃げている政吉にとって、江戸を離れてからは光の当たる道は歩けまへん。で、お決まりの裏街道を生きる世界に身を投じ、流れ流れて、あてのない旅に生きるほかありまへん。

 飛騨の高山へ通じる街道の居酒屋で、政吉さん、岡っ引きの文太を見かけます。てっきり、自分を捕まえるために追っていると思い、危うく身をかわしたのですが、実は、この岡っ引き、政吉を追っているのではなかったんですね。
 その夜、高山宿へ投宿した政吉は、宿場で流しをするひと組の男女を見かけます。見かけたのはいいけれど、その相方の女がおさんそっくりだったんですね。
 わが目を疑った政吉は、それとなく、この男女を見ていると、そこに現れたのが岡っ引きの文太です。2人は文太から逃げますが、片方の女、おなかは文太に「火つけの下手人、見つけた!」と言い募られ、捕まってしまいます。後に残ったのは相方の男、徳之助(島田順司)、線の細い、つっころばしタイプに兄ちゃんです。

 文太は政吉を追っていたわけでなく、このおなかを追っていたんですね。
 おなかは江戸で芸者をしていた女で、料亭に火をつけた放火犯として追われていたのですが、これにはわけがあります。
 おなかには徳之助という恋人がいるのですが、それにもかかわらず、おなかに言い寄っていたのが文太というわけで、さすがに文太さん、おさんに横恋慕していた社長とつるんでいただけのことはあります。死んだ社長と同じことを企んでいたんですね。

 おなかを料亭の一室に呼び出し、襲いかかろうとしてもみ合ううちに行灯が倒れて火が回って火事になったというのが真相で、文太は一方的に火事の責任をおなかにかぶせてしまったのです。岡っ引きといえど権力側ですから自分の身を守ることと、自分になびかない女への腹立ちがあったことは容易にくみ取れます。

 翌朝、おなかを乗せた唐丸駕籠(被疑者を護送する駕籠)が江戸へ向かう中、政吉は護送の一団を襲い、おなかを救出します。おなかの手をひいて、ひたすら山道を逃げ走ります。
 ようやく、逃げ切ったところで、政吉は「俺と一緒に逃げてくれ!」とおなかに打ち明けます。

 おなかにすれば、「何言ってんの、あんた?」です。
 文太に見つかった以上の仰天驚地でおます。辛くも自分を助けてくれた恩人が、オオカミになったのも同じでおます。
 やがて、自分たちに追いついた徳之助とおなかが泣いて抱き合う姿を見て、政吉は自分の思いを絶たざるを得ません。
 おなかは、おさんと瓜二つであっても、おさんではないのですね。顔はそっくりでも、性格も過ごしてきた環境もなにからなにまで別人でしかありません。

 その分別がようやくついた政吉は、おなかと徳之助を逃がすと、なおも追ってくる文太と対峙して、「中山七里」一巻のおわりでおます。
 

 



 
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