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2009-09-15

長谷川伸シリーズ2

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「長谷川伸シリーズ」第2話は「雪の渡り鳥」です。
 
 映画のほうでは、1950年代から60年代にかけて長谷川一夫や市川雷蔵が主演してますよね。
 鯉名の銀平さんのお話です(とりわけ、長谷川一夫はモノクロとカラー版の2本を残しています)。

 テレビ版では、杉良太郎が主演しています。
 いまや、杉サマは「大杉」になっていますが、このころの杉サマは歌手から日活の若手脇役俳優を経て、ようやく、東京・明治座や大阪・新歌舞伎座で座長公演を張れるようになった、商業演劇界の希望の星的「中杉」でおました。

 相手役のお市には、これまた日活映画のヒロインだった松原智恵子が扮しております。
 脚本は、さわさかえ、監督は井沢雅彦でおました。


 長谷川伸の股旅物を読んだり、観たりしていると、時にグサッと突きつけてくるものがあります。

 この「雪の渡り鳥」もそうで、ここでは「お前、惚れた女のために身を投げさせるかい?」でおます。

 銀平さん、惚れたお市ちゃんのために身を挺するお話です。

 ところが、お市ちゃんには、ほかに好きな男がいたんですね。銀平の兄弟分の卯之吉(江原真二郎)です。
 だから、意を決して銀平が自分の想いをお市にコクっても、肝心のお市が「亭主にするなら卯之さん」と一途に思っているから、銀平のラブコールも功を奏しません。

 つらいですね、銀平さん。だから、銀平はお市の幸せを願いつつ、旅に出ちゃいます。
 この場合の旅とは「旅行」じゃありませんよ。あてのない、行方定めない旅です。ま、フーテンの寅のようなもんです。 
 寅の場合は香具師ですから物品販売という生活の糧になるものがありますが、銀平は博徒です。だから、食っていくにはバクチしかありません。

 そして3年。故郷恋しの情もだし難く、お市たちが暮らしている下田に戻ってきます。
 てっきり、お市や卯之吉は幸せに暮らしているだろうと思いきや、3年の間に自分が属していた組織の親分は敵対する博徒に殺されてしまっており、その親分の仇をとろうと卯之吉は必死こいているところでした。そして、お市は亭主にした卯之吉のそんな行動に泣いていたのでした。

 そんな現状を知って、ダメだ、こりゃ~と思った銀平さん、立ち上がります。
 死んだ親分のためでもない。兄弟分の卯之吉のためでもない。ただ、ひとえに今もなお、心ひそかに愛しているお市のためでおます。

 無駄な努力の卯之吉の暴走を傍観していたら、今よりもっと泣きを見るのはお市じゃないか。
 銀平さんの優しい男心でおます。

 結果的に親分の仇を討つことで卯之吉の暴走はストップし、お市と卯之吉は幸せに暮らせるようになると考えたからですね。
 そして、その通りに実行し、銀平は役人の捕縛につき、雪の降りしきる夜、引き立てられていきます。

 これで、おしまいです。 
 銀平の自己犠牲、無償の愛、挺身、何とでも形容できますが、自分は惚れている、しかし、相手は自分の想いを知っているのに振りむいてくれない、でも、思慕は消えない、そんな相手のために自分は何も得るところのない行動に出る。

 長谷川伸が読者や観客に突きつけている人の心のあり方ですね。

 ってなことを思いながら今回も観ていたら、
 「ありゃ、どっかで観たようなストーリー・・・」と、記憶の壺のふたを開けてみると、ありましたね。

 1971年の東映京都作品「任侠列伝 男」(脚本・笠原和夫、監督・山下耕作)でした。
 この作品も女1人を巡って男2人がからむ三角関係が描かれていました。 
 そして、はみ出てしまった方の男(鶴田浩二)が、女(桜町弘子)のために立ち上がるというストーリーでした。
 もっとも、「雪の渡り鳥」の方が生まれたのは早いので、この映画がそのあたりのヒントを「雪の渡り鳥」からいただいたのかどうかは不明です。






 
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