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2006-03-23

19)「わしは今年60になったけどな・・・」

 先日、テレビのCSで「木下恵介アワー 記念樹」を観ていたら、珍しく田中晋二が出演していました。
 田中晋二・・・?? 今では、そういう俳優さんでしょう。
 この「記念樹」自体も1966年放送で、40年も昔のテレビドラマですから古い話です。それからさらに10年以上昔の木下恵介監督作品に「野菊の如き君なりき」という映画があります。これは割と有名ですよね。
 この「野菊の如き君なりき」に主演した民子役の有田紀子の相手役として政夫を演じたのが田中晋二という当時15歳の少年俳優でした。有田紀子はほかにも何本か出演映画はありますが、この民子役のあまりにも清楚な印象が強いために、この作品一本だけで日本映画史上で永遠のヒロインの一人として生きています。
 一方の田中晋二は、この作品以降、「喜びも悲しみも幾年月」や「風前の灯」など木下恵介監督作品を中心に映画に出ており、いつの間にか、スクリーン上から姿を消したようですが、少なくとも1966年当時はまだ俳優として活躍していたんですね。
 ということで、今回は「野菊の如き君なりき」で、ボクの印象深い話をちょこっと・・・。この作品、1966年、大映で「野菊のごとき君なりき」として、1981年には東映で「野菊の墓」として再映画化されています。ヒロインの民子は大映版が安田道代(現・大楠道代)、東映版が松田聖子でした。どちらも現在、清純なヒロイン像からは考えられないキャラクターを発揮しております。
 


 木下恵介といえば戦後、溝口健二や小津安二郎、成瀬己喜男、黒澤明、内田吐夢、今井正、田坂具隆、豊田四郎など日本映画史の表街道まっしぐらな映画監督たちの群雄割拠の時代に生きた一人です。代表作「二十四の瞳」で「泣きの木下」と異名をとった映画監督です。
 この「野菊の如き君なりき」も「泣きの木下」の魅力がいかんなく発揮されています。しかし、周囲の大人たちに寄ってたかって潰されてしまう従姉弟(いとこ)同士の悲恋物語であっても、ただ観客を泣かせているだけではありません。よく観てみると決して声高には叫んでいませんが、ドラマの中でチクッと社会に対する批判眼を忘れてはいません。これは「二十四の瞳」でも同じ姿勢が貫かれています。
 「野菊の如き君なりき」では、そんな木下恵介の姿勢を担って登場しているのが、浦辺粂子さん扮する民子のおばあちゃんです。このおばあちゃん、一本筋が通っていてふるっています。
 家事の手伝いに行っていた政夫の家から実家に連れ戻された民子は、両親(高木信夫、本橋和子)から町の実力者の家への結婚をしきりに勧められます。周りの大人たちの偏見から無理やり政夫と引き離された民子は傷心の日々を送っています。業を煮やした両親は政夫の母親(杉村春子)まで担ぎ出して娘に縁談を承知させようとします。
 そんな時、それまで成り行きを見守っていたおばあちゃんが囲炉裏の前に座って息子夫婦や政夫の母親に敢然と言います。

 「だけどな、皆も聞いとけなぁ。わしは今年60になったけどな、60年生きてきた中で何が一番うれしかったっていってもな、死んだじいさんと一緒になれた時くらいうれしかったことはなかった。それだけでも、この世に出てきてよかったと思うたわ。もうほかのことなんぞ、あってもなくてもどうでもよかったわ」

 このおばあちゃんの言葉で映画を観ていたボクの体に緊張感が走りましたね。おばあちゃんはだんだん激昂してきて、このあと、「もうちょっと民子の身にもなってやれ」と捨てゼリフを残し、手にしていた菓子を投げ捨てて部屋を出ていくのですが、一番の年寄りが息子世代の誰よりも「ひとを好きになる」ことへの理解があり、苦しんでいる孫の一番の同情者だったんですね。古い世代が若い世代よりも頑固ではないこともありえるという皮肉も効いています。
 もちろん、このおばあちゃんの八面六臂の大活躍で孫の民子と政夫はめでたく結ばれました・・・とはなりませんが、でも、たとえ言葉だけであっても、おばあちゃんの厳しい批判、意外な年寄りの姿勢がなかったら、この映画は涙を誘うだけの単なる悲恋物語に終わっていたことでしょう。
 そういえば、一昨年に観たフランス映画「やさしい嘘」でも、閉塞した現状から抜け出たいと願う娘の一番の理解者は、やはり、おばあちゃんでしたよね。ガラス越しに孫娘に、さりげなくピースサインを送るおばあちゃんに心の中で拍手喝采でした。
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 昨日というか、本日の早朝、『麦秋』(実はこの映画も何故かしらねど、幼少の頃、テレビで観た記憶がある。子供たちがパンを足蹴にする場面がくっきり印象に残っている。もっとも、パンじゃなくて、原節子が買ってきたケーキと思っていたけど)を観直して、原節子の「40にもなって、独り身というのは、何かへん」という台詞に、ハッと我が身を振り返ってしまいました。

 昨年、木下恵介の評伝を読んでから、少し木下映画を観直していました。でも、実のところ、木下の三大名作といわれている『野菊の如き君なりき』はまだ未見です。それでも、リメイクは観ているんですけど…。

 そういえば、ひばりがハーフとは知りませんでした。やはり、誰か(俺が?)がやらなければいけないようですね。

追伸:『麦秋』の大和って、どのあたりかしら? 大和郡山かそれとも明日香の方かな?

「麥秋」の舞台は・・・

 ははは・・・、「40にもなって・・・」って、まだ上には上がいるから安心してください^^
 木下恵介って、今よくやっている映画監督掘り起こしからも、ちょっと忘れられているような・・・。DVDボックスは出ているんですけどね。
 ひばり、そうですよ。
 「麥秋」の大和って、イメージ的には明日香辺りがぴったりですが、特定してないですよね。でも、ラストの、画面の向こうに小高い山があって手前に麦畑が広がっている所をゆっくりとした移動で捉えている場面を観ていたら近鉄線が走っている桜井ー八木間の風景によく似ているのですが、断言はできません。
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