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2008-10-14

夢のような橋の上で「緋牡丹博徒 お竜参上」

緋牡丹博徒お竜参上


 「やはり、川があるんですよ・・・故郷(くに)です。北上川・・・。山も見えるんですよ、岩手山が。その山の見える林の陰におやじとおふくろが眠っているんですよ」

 雪に降り込められた暗い川面に目をやりながら、男が故郷のことを話し始めます。
 横に立つおんなは男に傘を差しかけて、同じように川面を見ながら聞いています。

 旅先のバクチ場で知り合っただけのおんなと男は東京・浅草に近い山谷堀にかかる今戸橋という橋に立っています。
 男は妹の遺骨を持って、故郷の岩手に帰ろうとしています。
 おんなは手作りの弁当に色鮮やかなミカンを添えて男を見送りに来ています。

 わがご贔屓、藤純子主演、加藤泰監督の「緋牡丹博徒」シリーズ第6弾「お竜参上」(1970年)の有名な雪の今戸橋のシーンですね。繰り返し、繰り返し、もう何度観たことですやろ、映画館で。

 「緋牡丹博徒」シリーズの第6弾「お竜参上」では、われらがお龍さんは、人探しのため、東京へ出てきます。
 探す相手は、お君という女の子です。お君といえば、シリーズ3作目「花札勝負」に登場した盲目の少女(古城門昌美)です。
 あれから10年(推定)くらいの時間が経っています。あの時、お龍は少女の開眼手術で目が見えるようになった少女を見舞っていますが、渡世上のいざこざで父(汐路章)も母(沢淑子)も亡くした少女とはそれっきりになっていました。
 「お竜参上」は「花札勝負」の、いわば、続篇でおます。

 旅先のバクチ場で知り合った青山常次郎という旅人(菅原文太)から「よく似た子が東京の浅草にいる」と聞いて、お龍は東京へ出てきます。そして、身を寄せた浅草の親分、鉄砲久(嵐寛寿郎)の家で、めでたく、お龍は成長したお君(山岸映子)と再会を果たします。

 これだけで、もう映画の始まりから30分ほどでお龍の用件は片付いてしまってますが、それだけでは1時間40分を要した映画にならしまへん。
 お定まりの抗争劇が展開します。鉄砲久の縄張りを狙う親分、鮫津政(安部徹)が登場し、さらに鮫津政の子分の銀二郎(長谷川明男)がお君と恋仲で、ここにロミオとジュリエットが誕生したとあっては話は複雑になってきます。

 同じころ、青山常次郎も東京に出てきて鉄砲久を訪ねてきます。常次郎は別れて7年経つ妹の所在を知り、妹が女郎になって悲惨な死を遂げていたことに怒り、その女郎屋を仕切る親分の片腕を切り落としてきたため、追われています。追うほうのやくざ(沼田曜一)が鮫津政に身を寄せたので一層騒ぎは大きくなってしまいます。

 抗争の最中、常次郎は妹の遺骨を持って故郷に帰ることになります。
 そして、登場するのが雪の今戸橋のシーンです。
 おんなも男も言葉は少なめです。

 雪が積もった橋のたもとで男は草鞋の紐を結び直しています。そこへ、橋の向こうから傘を差したおんなが小走りに駆けてきます。
 迎える男が言います。
 「あれで当分、六区はサツの目が光りますから、初日は大丈夫でしょう」
 おんなは「はい・・・」としか言えません。
 「じゃ、あっしはこれで・・・」と男が立ち去りかけるのへ、おんなが「あの・・・」と声をかけます。
 ロングにひいたショットの中で、男が振り返ります。でも、その男の振り返り方に、ご注目でおます^^

 「お竜参上」公開から3年後、藤純子の女優引退直後に、この作品がリバイバル上映されましたが、その時のポスターのキャッチコピーに「純子は何んにも言いません 文太も何んにも言えません」とあります。そのキャッチコピーそのままの、ここはワンショットでおます。
 万感の想いと立ち去りがたい想いを交錯させた心理を、この時の文太の振り返り方が表現しているのでおます。
 続くショットが欄干の前に立った男におんなが傘を差しかけ、冒頭の男のセリフになり、「やはり、川があるんですよ・・・」の言葉と同時に低く、低く、主題歌のメロディーが流れ始めます。
 雪、橋、故郷、果物などなど、加藤泰ワールドの重要なエッセンスが詰め込まれたラブシーンでおます。

 今戸橋は、この後、後半にもう1度出てきます。
 今度は男が東京へ戻ってきたところで、前半の雪にかわって夜霧があたり一面を覆っています。
 すでに、この時、おんなは対立する鮫津政への殴り込みを決意しています。
 だから、男は「お龍さん、お供させてもらいます」と申し出ます。
 その前に「おかげで妹も無事、故郷(くに)の墓へ。あなたのお君さんは?」と男は問い掛けます。しかし、おんなは答えません。
 ただ、目と目が見詰め合うだけのクローズアップのショットが織り込まれ、まるで任侠映画のお手本のようなシーンでおますが、この時のお龍さんは内心、忸怩たる思いを抱いていたに違いありまへん。

 というのも、昔、助けっぱなしにしたままだった女の子探しで始まったこの映画でも、やっぱり、お龍さんは探していた女の子、お君を助けきったことにはなっていないからです。

 クレジットタイトルが出る前の冒頭、お龍は片田舎の女郎屋で1人の若い女郎(夏珠美)と会います。もしや、と思って訪ねていったところ、人違いでした。
 しかし、その女郎の身の上話を聞いて、心優しいお龍さんは「故郷(くに)へお帰り。そったけあれば帰れるでしょ」と財布ごと大金を与えます。
 若い女郎はお龍の親切に感謝しながらも、恵まれた金全部を親元に送ろうとします。父親は病に伏し、まだ小学生の妹もやがては自分と同じような境遇になることがわかっているからです。それに、いったん、苦界に身を沈めたら堅気の世界には戻りにくいことを、この若い女郎は彼女なりに自覚していたのでしょう。

 それでも、お龍はその娘を救ってやりたくて郵便局から送金します(このシーンは脚本には出てきますが、映画ではカットされたのか、出てきません)。
 お金を送ってから、お龍さんの心に「あたし、間違ってたかしら?」と悔いを残します。

  「あん子の身の上ば聞いて。放っておけんごつなり、あん子が幸せになるよう、お金を送ってやりました。ばってんが、そいがほんなこつ、あん子のためになるのか・・・あん子自身がそっからはい出さんけりゃ・・・ちごうとりますでしょうか」
 
 三州(愛知県)の吉良港での青山常次郎との立ち話で、お龍さん、自分の行為に疑問を持ち、人助けってできるのだろうかとつぶやきます。

 そんな苦い経験があるにもかかわらず、探し求めるお君と再会したものの、やくざ同士の抗争の中で、お君の恋人を死なせてしまいます。
 前作「花札勝負」も同じでした。やはり、やくざ間の抗争で、お龍は自分が殺したのではないものの、お君の両親を死なせています。手術で目が見えるようになったお君に「もう、どこへも行かないで」と言われていたにもかかわらず、お龍さん、お君のその後の面倒を見ることもなく旅の空になってはります。

 その延長線上に、お君の恋人の死があります。だからこそ、霧の今戸橋で常次郎に「あなたのお君さんは?」と尋ねられた時、お龍は何も言えなかったのでしょう。

 「人1人を助けきることができずに何の侠客か?」という思いがお龍にはあったはずですが、それを表に出しては東映式の任侠映画は成立しまへん。なにしろ、東映任侠映画の主人公は強きをくじき、弱きを助ける人ばかりでしたから^^

 実際のやくざが果たしてそうなのか、どうか、そこらあたりに疑問を呈したのが加藤泰であり、「花札勝負」と合わせて、お龍は本当に人を助けることができるのかという命題が「お竜参上」には隠されているのでおます。
 このしつこさ、加藤泰ならではのこってすけどね^^
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