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2008-09-30

パチストのような「デトロイト・メタル・シティ」

 戦争映画「男たちの大和YAMATO」(2006年)で、国難に殉じようとする軍国青年を演じた松山ケンイチが、田舎出の冴えない音楽青年とカリスマ性を持ったヘビィ・メタルのヴォーカリストを演じ分けた映画「デトロイト・メタル・シティ」を観ていて、ふっと、かつて「東映映画の三十年」(1981年)というテレビの特別番組に出演していた萬屋錦之介を思い出しました。

 錦之介と松山ケンイチが似ているという意味ではおまへん。

 はるかな以前、東映時代劇でスターとなった錦之介(当時は中村錦之助)が往時を振り返り、伊藤大輔、内田吐夢、田坂具隆、今井正など、当時、巨匠、名匠と呼ばれていた監督たちとの出会いを通じて自分の来し方を語っていたんですね。

 「俺はこういうことができる、こうやったら誰にも負けないって思っていたところ、君にはこういう面があるんだよ、こういう才能があるんだよと自分では気付かなかったことを気付かせてくれた、そういう
人たちでしたね」

 発言内容は正確ではありまへんが、だいたい以上のような主旨のことを錦ちゃんは言っていました(今、正確さを確認しようにも録画してあったビデオにカビが生えたため、すでにジャンクして手元にあらしまへん)。

 そう言えば、森本薫の名作「女の一生」でも、堤家のおかあさんがヒロイン、布引けいに言ってますな。
 「誰にでも自分ひとりの願いはあります」

 ちょっと意味合いは違いますが、「デトロイト・メタル・シティ」は、錦之介と堤家のおかあさんの話を合わせ持ったような映画で、主人公の松山ケンイチが喘ぎ、苦しむ映画なんでおます。
 

 最近、映画でもテレビドラマでも、めったやたらにコミック、いわゆる、漫画を原作にした作品が多いようですが、「デトロイト・メタル・シティ」もご多分にもれず、若杉公徳という人の人気コミックを原作としとります。

 東京の大学への入学を機に九州から上京したケンイチくん、ひそかにJ-POPのシンガーソングライターを目指しております。
 大学でも、そっち系のサークルに入り、プロへの道もだしが難く、たまたま見かけた募集広告で門をたたいて、その音楽事務所に入ったのが間違いの始まりでおます。
 本人はポップ系のミュージシャンになるつもりなのに、音楽事務所の社長、松雪泰子は大のヘビメタ狂で、いつも、たばこ(大麻たばこ?)をふかして目つきはランランとあやしく、おまけに言うこと、やること、かなりSがかってます。
 たちまち、ケンイチ君は金髪・ロンゲのカツラに歌舞伎役者とタメ張りできそうな真っ白塗りのメイク、皮のスーツにブーツといういでたちでヘビメタミュージシャン、ヨハネ・クラウザー2世に仕立て上げられ、あれよあれよという間にロック界にデビューとあいなります。

 ところが、これが大フィーバー。ファンの間では神がかったスーパースターとしてカリスマ的存在となり、ケンイチ君が作るロック曲のCDもヒット続きで松雪社長も大満足です。
 大迷惑なのはケンイチ君。自分の思いとは裏腹に、どんどん勝手にイメージが先行していって、本来の自分が追いついておりまへん。おまけに大学の同級生で、ちょっとラブな気持ちを寄せている加藤ローサが「下品よ~」と言って憚らない大のヘビメタ嫌いなので、クラウザーの正体を明かすこともできまへん。

 いつもいつも嫌気が頭をもたげており、「あんたは自分の才能に気付いてないのよ」と説教する松雪社長のSMもどきのシゴキにヘトヘトにされても「ボクの夢は、こんなんじゃないのに・・・」と半泣き状態でおます。
 とうとう意を決して、ケンイチ君は東京を脱出し、九州へ帰ってしまいます。
 ところが、心機まき直して帰った実家では、東京へ出ていく時、見送ってくれた純朴な中学生だった弟が、あろうことか、自分が演じるクラウザーに狂っていて家の仕事は手伝わないわ、働かないわの困ったちゃんになっていました。

 並の説教ではアカンわと考えたケンイチ君、ある夜、クラウザーとして弟の前に現れます。スーパースターのいでたちで耕運機を操り、雑草を刈り、飼い牛の世話をしてみせます。弟は大感激です。神のような存在のクラウザー様が自分一人の前に現れたのですから、そりゃ、ファンとしてはたまりまへんわな。
 でも、ここ、皮肉がきいとります。本当の自分とはかけ離れた虚像に嫌気がさし、逃げ出したはずなのに、アホな弟をいさめるため、嫌なはずの虚像にならざるを得ないとは、人生の皮相ですよ、こりゃ。

 息子が東京でロックスターになっていることを知ってか知らずか、宮崎美子のおかあちゃんに「夢をみさせてあげることができるのよ」と諭され、ケンイチ君は再び東京へ向かい、自分をぶっつぶそうと来日した引退間際のアメリカロック界の大物とのセッションに挑戦しますが、この息子の正体をおかあちゃんが知っているのかどうか、そのボヤカシ方もよろしおま。

 自分本来の得意とする音楽では全然ウケが悪く、自分では思いもよらないヘビィメタルのボーカルとしてスターになってしまったケンイチ君は、マルセル・カルネ監督のフランス映画「天井桟敷の人々」(1945年)のジャン=ルイ・バローを彷彿させますな。
 アルレッティに恋こがれ、胸の苦しい日々を送ったジャン=ルイ・バローが別の女性と結婚しても、なお、追っても追っても遂にアルレッティを手に入れられず、人込みの中に埋もれていく姿は、ケンイチ君そのものなんでおました。
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