2006-03-12

13)泣いても一生の「博徒一家」

 「博徒一家」は、1970年3月封切の東映任侠映画です。脚本・村尾昭、監督・小沢茂弘、主演・高倉健の陽春向けオールスター作品です。
 オールスターだから、東映任侠映画のお馴染みさんがいっぱい登場します。親分が志村喬、その女房が東竜子、その一家の三羽烏といわれる若い衆が高倉健、若山富三郎、大木実、高倉健の恋人で若山の妹が藤純子、若山の女房が桜町弘子、敵対する親分が渡辺文雄、以下、名和宏、内田朝雄、遠藤辰雄、林彰太郎、八名信夫、汐路章・・・が顔を出し、クレジットタイトルの締めくくり(トリ)に鶴田浩二が登場し、これまた、一家を助ける旅のやくざというお馴染みの役どころを演じています。


 ボクが、この映画を観たのは同じ年の7月でした。田舎の映画館ながら、今度は半年の時間差はなく、都会での公開後、四カ月たってからのことでした。併映は「現代女胴師」、これは八代万智子(ご存じですか?)主演のギャンブラー映画、もう一本は篠田正浩と寺山修司が組んだ河内山宗俊物の「無頼漢」でした。ね、田舎の映画館って、すごい特選名画を組んでるでしょ?? 

 「現代女胴師」はもともと「博徒一家」の併映作品ですが、突如出現した映画なんですね。八代万智子といえば、東映の現代劇にあっては脇役女優で、そのころは既にフリーになっており、テレビでは例の「プレイガール」の一員として顔を出していた女優さんです。この作品一本で終わったとはいえ、なぜ、突然、主役を張るようになったのか、今もって謎です^^

 それはさておき、「博徒一家」です。内容は、もう説明の必要もないでしょう。繰り返し描かれていた、やくざ世界の抗争劇です。冒頭、いきなり、健さんの殴り込みがあり、その健さんの服役中に本題の抗争劇が起こるという筋立てです。

 わがご贔屓の藤純子は、その健さんの恋人役です。冒頭の殴り込みの後、官憲に引かれていく健さんを見送り、それからはひたすら、男の出所を待ちます。そして男の出所後、押しかけ女房のようにアタックしていくのですが、これまた、健さんは素直に受け入れようとはしません。そこで、純子は健さんに訴えます。

 「泣いても一生、笑っても一生なら、私は好きな人のためになりたいんです」

 ズバリ、殺し文句ですよね。
 好きな女性にこんなことを言わせてしまったら、男たるもの、もう知らん顔はできないですよね。結局、引退した親分や兄弟分の若山富三郎たちの勧めもあって健さんと純子は所帯を持つようになるのですが、当時、女性の側からの口説きの言葉として印象的なセリフだと思いました。

 ところが・・・・・。
 この同じセリフが出てくる映画があったんですよね!
 「博徒一家」を観た時よりも、はるかあとになって観た映画「博徒」にも、このセリフが出てきました。

「博徒」は東映任侠映画路線が本格化した作品として知られている1964年度の映画です。そこで、このセリフを言っているのは南田洋子さん、言われた相手は鶴田浩二です。
 でも、待てよ、です。ボクは「博徒」をリアルタイムでは観ていません。「博徒」の方が「博徒一家」よりも古い映画ってことは、「博徒一家」でのこのセリフの方が二度目の登場ということになりますよね。「博徒」の監督は小沢茂弘、脚本も小沢茂弘と村尾昭です。
 同じ作者だから出てきても不思議はないようなものの、でもねぇ、この使い回しは・・・と、「博徒」で同じセリフを耳にした時、思いました。

 加藤泰監督は「江戸川乱歩の陰獣」(1977年度)で主人公の探偵小説作家に
 「探偵小説で同じトリックを使うのはタブーですよ」
と言わせていますが、口説き文句も同じなのはタブーですよね。
 「泣いても一生・・・」の言葉は、それ自体すごく心に響く口説き文句であるだけに、残念だったことを今でも憶えています。
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