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2008-07-03

お龍は現場監督の「緋牡丹博徒 二代目襲名」

 わがごひいき、藤純子主演の「緋牡丹博徒」シリーズ第4弾「二代目襲名」は、「花と龍」や「麦と兵隊」などの小説で知られる火野葦平の「女侠一代」を原作としています。

 シリーズ中、唯一、タイトルに原作者を銘打った作品です。
 前作の「花札勝負」でも『原案 石本久吉』とクレジットタイトルに出ていますが、こちらは映画の冒頭に出てくるお龍が仁義を切るシーンで藤純子に仁義の切り方を指導した、元その筋のおじさんで、敬意を表したタイトルだったのでしょう。

 封切は1969年4月。鈴木則文の単独脚本で、監督は小沢茂弘。シリーズ初登板ながら、これが最初で最後っきり、時代劇、仁侠映画を通じて会社の企画にピタッとはまる映画を演出し続けたエンタティナー監督ですね。

 タイトルからも分かるように、いよいよ、緋牡丹のお龍は矢野組二代目を継ぎます。
 襲名した後の初仕事が、この映画に描かれている石炭運搬のための鉄道敷設工事です。

 ところが、ファンの間では、この作品、シリーズ最後の「仁義通します」(72年)と並んで評判ええことおまへんのですわ。

 舞台は筑豊です。筑豊といえば、五木寛之の「青春の門」でも描かれているように、かつては日本有数の石炭産出地域でおました。
 殊に「緋牡丹博徒」シリーズの時代は明治中期。そのころ、石油が今のように全生活の命綱という時代ではありません。ずべての動力が石炭にかかっており、全国の炭鉱では生めよ増やせよの増産に次ぐ増産の時代でおましたな。

 掘り出された石炭を港まで運ぶのは川舟です。その石炭運搬に従事する人たちは「川筋」と呼ばれていました。東映の任侠映画では、たびたび登場している職業集団でおます。
 そんな人間の力と、ささやかな運搬道具で石炭が川上から川下に運ばれている地域にも、合理化の波が押し寄せてきました。
 
 産出された石炭を買い取って需要先に供給する企業は、もっと石炭を1度に大量に運べないものか、と考えます。まだトラック輸送の時代ではおまへん。そこで考案されたのが陸蒸気(おかじょうき)、つまり、汽車ですね。汽車を通すには用地を買収してレールを敷かなければなりません。

 そこに登場するのが、今回の緋牡丹お龍なのです。

 亡き父の弟分(嵐寛寿郎)が、この鉄道敷設の工事を請け負っていますが、たびたび川筋の妨害で工事の進捗状況はよくありません。ついには、アラカンさん、大ケガを負ってしまい、そこで、お龍がおじさんに代わって工事の陣頭指揮を取ることになりました。

 子分を引き連れ(いつの間に集まったのやら?)、工事を引き受けたお龍にとって初めての一大利権工事です。協力するのは兄貴分、熊坂虎吉(若山富三郎=今回は休演です)の子分、不死身の富士松(待田京介)や大阪の堂萬一家を率いるお神楽のおたか(清川虹子)、それにお龍に一目ぼれしてしまった大阪の炭鉱成金(遠藤辰雄=現・太津朗)たちです。

 工事は依然、川筋の妨害が続いてます。そら、そうですわな。鉄道ができて石炭が汽車で運ばれるようになると、それまで舟で石炭を運んでいた川筋たちは干上がってしまいます。だから、川筋たちのしつこい抵抗には生活権がかかっています。

 川筋と鉄道の関係、これ、おもしろいですよね。
 前近代と近代のせめぎあいでおます。この映画、明治以降の近代日本に起こった産業構造の変化に触れております。

 通常、任侠映画では前近代が善、近代が悪という簡単に図式化されており、主人公は善のほうに属しています。しかし、この映画では主人公のお龍は近代化推進の旗頭となっています^^

 鉄道工事を進めるお龍に対抗する川筋の元締め(石山健二郎)が手下たちを煽動させているのですが、元締めを煽って、この両者をぶつからせ、あわよくば漁夫の利を得ようとしているのが天津敏扮するやくざの親分です。いつの世でも、社会のからくりというものは同じでおまんな。

 こんなお龍にそれとなく協力するのが、流れ者のやくざ(高倉健)です。映画の最初のほうで、お龍は恋人(和崎俊哉)の帰りを待つ身売り寸前の娘(時美沙)を助けています。この娘の兄が健サンというわけで、おまけに健サンと川筋の元締めは兄弟分の間柄という因果関係で、健サン、年上の元締めに「もっと時代を見ろよ」と説教したりしています。

 いつまで経っても自分の計画通りに事が運ばないことに業を煮やした天津敏は、元締めもろとも川筋たちをダイナマイトで吹き飛ばしてしまうという暴挙に出ます。そこでお龍と健サンが仇討ちに立ち上がるという、いつもの筋運びで映画全巻の終わりとなります。
 ちなみに、かつて小沢茂弘監督へのインタビューで、シリーズ中、ラストの斬り込みでお龍の髪が色っぽく乱れるようになったのは、この「二代目襲名」からだと教えられました。

 この映画、なにゆえ、ファンの間では不人気なのかというと、いつもは大島かなにかの着物姿のお龍が工事労働者の格好で出てくるからですね^^

 シャツの上にハッピを羽織り、下半身はニッカーボッカーならぬ、ズボン姿でおます(脛をくっと絞っったあのズボン、何というのでしょうか?)。ま、工事現場にぞろりとした着流しで現れては、アンタ、どういうつもりなん?なのですがね^^
 どうも、そのスタイルが評判よろしくないようですね。

 まぁ、ボクもあんなお龍のスタイルを歓迎しているわけではありませんが、映画そのものは近代化、合理化の波の中で古いものと新しいものとのせめぎあいが面白いし、それに、いつもは「ご法度の裏街道を行く」バクチで身すぎ世すぎをしているお龍が「まっとうな仕事」をしている唯一の映画でもあるわけです。

 今年8月、大阪・新歌舞伎座の「川中美幸特別公演」で、この「二代目襲名」が舞台化されるようです。新歌舞伎座の芝居と歌謡ショーの歌手芝居公演ですね。昨日、新聞の広告で知りました。
 タイトルは「緋牡丹お竜」と、そのものズバリで、原作・鈴木則文(「二代目襲名」より)、企画協力・東映株式会社とありますが、脚色は別の人。相手役は刑事・古畑任三郎サンの弟、田村亮、お神楽のおたか親分には赤木春恵が特別出演します。
 今の時代、1カ月の座長公演って、大変ですよね。美幸ちゃん、地元・大阪で頑張ってください。ボクは?? 当然、観にいきません。
 およそ30年昔、テレビの特別番組のドラマで名取裕子も緋牡丹お龍に扮していましたが、当然ながら、それもボクは観ていません。
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