2008-05-01

女優列伝6 志村のお姉さんは姐御に・・・

 わがショボいブログでも時折、コメントを残していってくれる奇特な方はいるもので、前回のページでは自分の返信も含め、コメントの更新が8回という初記録を樹立^^しております。
 やり取りの相手が、ほとんど同一人物だったというのも、わがブログならではで、しかも、話題が表題の映画についてではなかったというのも、これまた、わがブログの特徴でおまんな^^
 どんな話題で8回もバトルをやったのか、気になる人は前回のコメントをどうぞ^^です。

 さて、縁あって昔、テレビで放映され、根強い人気を保っていた「特別機動捜査隊」という刑事物のテレビ映画を観る機会があり、今となっては貴重な第1回放送分(1961年放送)を観ました。
 何分にも47年も昔のフィルムですから、冒頭の導入部分は声だけで、画は失われているという骨とう品でしたが、意外や意外の俳優さんがチラホラでございました。
 
 この作品は、人気番組になったため、テレビ用の製作を請け負っていた東映東京が劇場用にも2本製作(1962年)しております。われわれにとっては悪役俳優だった安部徹が捜査隊のボスに扮しており、事件の犯人を追い求める側に回っております。
 テレビ版のボスは、これまた、われわれにとっては子ども向けテレビ映画「七色仮面」のおじさん、波島進で、シリーズも長期化すると、のちにいろいろな捜査班が主役になり、果ては今、テレビで水戸のご老公を演じている里見浩太朗もボスを演じていたりします。
 
 映画版の監督は2本とも、後にプロデューサーに転身する太田浩児でしたが、テレビ版の1回目の監督は関川秀雄。このシリーズの監督はのちにテレビ映画専門の人たちにバトンタッチされていきますが、第1回ということで、ご祝儀だったのでしょうか、本編(劇場用映画)の監督の出座を仰いでおります。
 関川秀雄といえば、1950年代、1960年代を通じ、東映現代劇の映画で社会派ドラマを一手に引き受けていたおじさんですね。のちに梅宮辰夫、緑魔子主演の「ひも」だとか「かも」だとかの風俗映画も演出しており、まぁ、風俗業界の話も社会派といえなくもありません。

 前置きが長くなっております。

 テレビ版の「特別機動捜査隊」第1回は、刑事さんたちが3人組の強盗を追い、逮捕するまでのお話ですが、この3人組の強盗がズッコケものでした。最初に夜中、夫婦の家に押し入るのですが、ハンカチか何かで鼻と口を隠しているだけ、2件目の街の不動産屋に押し入った時は何も隠さず、堂々と顔をさらしております。
 そんな強盗、おらへんやろ! でございますな^^
 この3人の強盗を演じていたのが主犯格が日尾孝司、サブが室田日出男、運転手が柳生博の面々。この当時の大部屋級の若手の俳優さんですね。日尾孝司はのちに東映東京作品の脇役俳優兼擬闘師となり、室田日出男は渋い脇役として名を馳せます。柳生博はテレビでお馴染みのあの人、です。今、自然に囲まれて畑を耕している人ですね。

 なにしろ、導入部分が欠けているので、ちょうど、そこはスタッフ、キャストの紹介に当たる部分で、どんな俳優が出ているのか、わかりません。まさに、タイトルは終わりに出る今の映画並みでおますな^^
 そして、強盗たちが2件目の不動産屋に押し入って逃走するシーンで、通りに女の子が登場し、逃げて行く車を目撃するのですが、その女の子を見てボクは「おおー!!」と目を瞠ってしまいました。
 その女の子は不動産屋の事務員という役柄ですが、演じていたのが志村妙子。のちの太地喜和子です。

 
  

 太地喜和子の女優としての出発点は、東映ニューフェイスとして東映所属の俳優となったことです。その時の芸名が「志村妙子」ですね。
 現代劇、時代劇を問わず、1961年から1962年のわずかな期間、そこかしこに顔を出しています。顔は出しているけれど、タイトル表記の扱いも決して、その他大勢でなかったにもかかわらず、ドラマの中心にいることなく、その外郭を飾る彩り程度でしか顔を出していません。
 まだ、10代の女の子そのものという顔立ちで「七色仮面」に続く子ども向けのテレビ映画「ナショナルキッド」ではヒロインばりにレギュラーで出ていましたが・・・。

 役者を夢見て女優となったものの、長ずるに及んで軽い役しかつかない女優生活に不満がたまってきます。新劇界の女王、杉村春子の舞台を観たのがきっかけで、ついに東映を辞めて文学座の研究生となり、女優としての人生の巻き返しを図ります。
 本名の太地喜和子のままで、その後の女優としての歩みは、今さら説明不要ですね。

 シナリオライター、笠原和夫の名著に「鎧を着た男たち」(改題「破滅の美学」幻冬舎アウトロー文庫)という一冊がありますが、太地喜和子も「鎧」をまとった女優さんでしたね。
 むろん、太地喜和子に限らず、芸能人は全員、公私、違った顔を持っていると思います。表の顔と内の顔が違っていて当然で、われわれ芸能人ではない人間も世間にさらしている顔と自分だけしか知らない顔を使い分けております。
 警察小説をいくつも書いている今野敏は自作の中で、芸能人は芸能人としての顔と本来の自分の顔に加え、業界向けの顔も併せ持っていると論破しておりますが・・・。

 酒豪、華やかな恋愛、きっぷのいい男まさりな性格、いずれも太地喜和子に付いて回ったレッテルですが、酒には強かったものの、どうも付き合い酒ばかりで、家ではほとんど酒を呑むことはなかったようです。
 太地喜和子の突然の引っ越し(1992年)後、住んでいたマンションには開封されていない酒のボトルが何本も残されていたということを親しい人から聞いています。それに、晩年は糖尿病を患っていたようですね。
 華やかな恋愛、これはもう当人にしか分からないことですよね。かつて入籍したことがある俳優さん、今もテレビのトーク番組で初老のお笑いキャラで出ていますが、その元夫のことは生涯、許せなかったという話も聞いています。
 きっぷのいい男まさりな性格、これこそ、太地喜和子の「鎧」中の「鎧」というべきものだったのでは? と思います。
 女優は本来、男のような性分でないと務まらないと、よく言われていますが、それも俳優としての顔ゆえで、たおやめ風情では押し流されてしまう世界にあって「鎧」をまとっているのでしょう。

 かつて偶然、太地喜和子に会った時、舞台はもちろん、映画やテレビで見る濃い目の化粧をした人ではなく、ほとんどノーメイクの、素顔に近い顔を見せている女の子が、そこにいました。もちろん、女の子と呼べる年代ではなかったものの、か細い、頼りなげな雰囲気の女の子がそこにいる、という印象でした。
 ボクが持った印象は、案外、濃い目の化粧の下に隠されていた、この女優の本当の姿だったのではないかと、今でも思っています。
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No title

いや~読み応えのあるエントリーでした。
太地さんの訃報に接した際、映画好きの先輩は…ってもういいか。本当にいい女だったな。ふっくらした面差し、びっくりするほど明るい笑顔の一方で、うれいを帯びた表情。生きていたら、どんな仕事をしてたんでしょ。
でも、現実にこんな女性と惚れ合ったら、大変だったでしょうね。

No title

カノカノエさん、お褒めに預かり、恥ずかしいやら照れくさいやらです^^
現実に、こういう女性と惚れあったら男はもう、専業主夫になるしかないですよね。ひたすら、相手に所帯くささが身につかないよう、ヒモ的存在に甘んじるしかない・・・っていうのは鎧をまとっている間だけのことで、その鎧を脱げば、いつか年下の友達^^にも話したことがあるんですが、思わず抱きしめたくなるような女性だったんですよね。強く抱きしめてくれる男を望んでいたのでは? もちろん、ボクでは役不足を自覚しているんですけどね^^
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