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2008-01-15

おばちゃんたちの老後はどうなる?「晩菊」

 成瀬巳喜男監督の1954年の東宝映画「晩菊」を初めて劇場で観たのは、1995年、今から13年前でした。
 
 当時、大阪への通勤のターミナル駅から徒歩1分という、便利極まりない場所にあった「ACTシネマテーク」という劇場ですが、今は既にありません。もともと東宝系の小さな封切館だった映画館を名画座としてリニューアルした劇場で、この名画座がなくなった後、梅田に同じ系列で「ACTシネマ・ヴァリテ」という名画座がビルの地下に生まれましたが、もちろん、今はもうありません。
 「シネマテーク」のほうはポルノ映画館として残り、「シネマ・ヴァリテ」のほうは居酒屋だったか何だったかに様がわりしています。

 昔あったような名画座が大阪には皆無となり、なかなか根付かないのは配給関係や興行関係の、素人にはわからない事情が絡み合っているらしいようですが、突如、誕生して短期間で消えてしまったあの現象、何だったのでしょうか。

 さて、映画「晩菊」です。
 成瀬巳喜男の映画には、林芙美子の小説を原作とした映画が何本もあります。この「晩菊」もそのひとつで、映画の題名となっている短編の「晩菊」のほか、「水仙」「白鷺」の2本の短編を合作し、田中澄江と井手俊郎が脚本を担当しています。

 金貸しをしている杉村春子を中心に連れ込み旅館(当時、まだラブホテルなんて、こじゃれたセックスハウスはなかったんですね^^)の女中の細川ちか子、会社の掃除婦の望月優子、小さな飲み屋を経営している沢村貞子の4人のおばさんたちが出てきます。

 いずれも若い頃は芸者で、その時からの仲間だったおばさんたちですが、このうち、杉村と沢村には子どもはありません。細川には息子(小泉博)があり、望月にも娘(有馬稲子)がいます。
 子どもを持つ2人は、それぞれ将来は子どもに面倒を見てもらおうと期待しています。しかし、子どもたちにもそれぞれ人生設計があるのは当然で、母親たちの期待は見事に裏切られてしまいます。
 息子のほうは長らくプー太郎だったのが、北海道に仕事の口を見つけて旅立っていきます。娘のほうも親に相談もなく結婚してしまいます。望月優子さん、木下恵介監督の「日本の悲劇」(1953年、松竹)に続き、ここでも子どもに捨てられる母親を演じています。

 沢村貞子は子どもはいないながらも夫(沢村宗之助)がいますが、夫も子どももいないのが、杉村春子扮する金貸しのおばさんです。
 このおばさんに、昔、付き合いのあった男(上原謙)から「一度会いたい」という連絡があり、おばさんは嫌いで別れた相手でもないので、久しぶりの再会に胸をときめかせ、男の訪問を待ちます。

 ところが、久しぶりに会って焼けぼっくいに火がついてもいいなぁーと思っていたおばさんの期待は見事に裏切られてしまいます。やがて訪ねてきた男は昔の色恋を再燃させる目的ではなく、仕事に失敗したため、おばさんに借金を申し込むのが目的だったのですね。
 かつて、心をときめかせた男の魂胆が分かってしまうと、おばさんの心は冷水をかれられたように冷めてしまい、男を追い帰した後、もう色恋にうつつをぬかしていられないと悟ったおばさんは、また、いそいそと金儲けに走るようになって映画は終わります。

 杉村春子が演じた金貸しのきんという女、小説を読むと訪ねてくる男を待って身支度するところがすごいですね。
 この小説を初めて読んだのは中学生のころですが、高校生の時に読み返した時、ドキッとさせられる場面がありました。
 きんは男が訪ねてくる前に銭湯に行きます。そして体を洗っている時、自分の太ももに湯をかけて肌が湯をはじく様を確認します。つまり、自分の若さがまだ失われていないことを確かめたのですね。

 これ、女性作家ならではの発想ですよね。林芙美子はさらっと書いているだけですが、もし、女が自分の若さを確認する仕草を男が描くとすると、せいぜい、鏡に映る自分の顔を見るくらいで、とてもこんなシーンは思いつかないでしょう。
 もちろん、映画ではこういう場面は出てきませんが、このちょっとした描写に女の若さの確認ばかりでなく、女が男との再会で何を期待していたのかまでが込められている、その林芙美子流のエロスがボクにも分かったのは、もっとずっと後になってからでした。
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No title

今年に入って、まだ6作品しか観ていません。さて、シネマヴェリテは80年代のミニシアターブームを牽引した名物館でしたね。最初に無くなったのは、大震災の4月。その後、ACTが進出し、最終的にシネ・ヌーヴォが入りましたが、ここは賃料が馬鹿高で、いかんともしがたい部分がありました。もっともACTも、大阪進出があだになって、駄目になったと聞きます。最後は、映画会社へお金が払えなくなって、夜逃げしたとか。
成瀬はよいですね。しかし、作品のよしあしに波ががありすぎますね。全盛期と呼ばれる晩年でも、たまにトンでもない作品を発表したりしましたからね。私は、『乱れ雲』とか『乱れる』なんても、かなり好きです。
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