2016-12-17

山中映画のリメイクは『上州鴉』

                         上州鴉161120

 たまたまCS放送で観た大河内傳次郎主演、冬島泰三監督の股旅時代劇『上州鴉』(1951年、大映京都)は、山中貞雄督のトーキー2作目とされる『国定忠治』(1935年、日活京都)のリメイク作品でおました。
 この『国定忠治』は上映フィルムが失われ、もう観ることはできないのでおますが、シナリオだけは残っとります。シナリオでは『国定忠次』となっており、原作が山中貞雄、脚色が三村伸太郎の鳴滝組のおにいさんたち(当時)で、リメイクの『上州鴉』は原作が三村伸太郎、脚色が新藤兼人で、ほぼ忠実に元ネタのシナリオを再現したグランドホテル形式の映画でおます。主演はどちらも大河内傳次郎。

 大河内傳次郎扮する国定忠治が関所破りをした後、役人に追われながらも上州の田舎町に現れ、その町にある旅籠(はたご)を舞台にしたドラマでおますが、なぜか元ネタのシナリオでは国定忠治となっているのに、リメイクの方の大河内傳次郎の役名が星越の瀧蔵となっており、これは役人に追われる忠治の偽名で、最後には歌舞伎でよくあるように「星越の瀧蔵、実は国定忠治」となるんやないかと待っとりましたが、最後まで国定のくの字も出てこない映画でおました。戦後、時代劇が解禁されてからの映画でおますが、なにか国定忠治を名乗るには映画製作上の差し触りがあったんかいな? でおました。なんでやろうね?


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2014-03-09

映画館から遠く離れて……

             仇討140130
             今井正監督「仇討」

 訳あって映画館がか足が遠のいて、随分長い時間が経ち、遂に今年に入って一度も映画館には行っていないのが現状でおます。2014年になって3カ月、わずかの間に今年も話題作、ヒット作、失敗作、凡作など、いろいろ映画市場に出回っておりますが、すべて我が目の前を素通りでおます。いや、賭け事のように自分に回ってきた札をすべて流している、というべきか。

 そんな中で、面白いのが「テレビ名画座」でおます。レンタル店に行くのも面倒だし、それに観落とした作品のソフトをレンタルしてこようと思えば、ボクの場合、公開された映画のすべてを借りてこなければならず、そんなこと、出来まへん。
 そこで登場するのが、これまでにテレビ録画して溜めに溜めたビデオテープの映画群で、これに市販のビデオソフトが加わります。今や、ビデオテープではなく、DVDの時代でおますが、間の悪いことにDVDデッキが持ち主の言うことを聞かなくなり、新しいデッキを購入しない限り、手持ちのDVDソフトもお預け状態というありさまでおます。
 DVDに比べれば、ビデオテープは画面の鮮明度は格段に違い、何のことはない、DVDが一般化する以前の旧石器時代に生きているがごとしでおます。

 「静かなる決闘」「仇討」「恋風道中」「鮫」「湖の琴」「ちいさこべ」「冷飯とさんとちゃん」「魔像」「黄金孔雀城」4部作「骨までしゃぶる」「明治侠客伝 三代目襲名」などなど、ほんの一例でおますが、いずれも酒の友としてビデオを回している昨今でおます。
 新作映画を観ていないのなら、これらのソフトで観た映画群の感想を述べようかと考えていた矢先、いつものように江戸に住まいするお友達さんから彼の地の名画座のラインアップを飾る映画のチラシが送られてきました。
 東北の地震・津波・原発事故から、まもなく3年。
 あの地震のあった日に江戸にお友達が移住してから、もう3年でおます。


              
2013-09-01

私は道具じゃないの「続大奥(秘)物語」

              続大奥(秘)物語130824

 他人の秘密をのぞくというのは楽しく、自分に被害が及ばない限り面白いものでおます。
 そんな、のんきなのぞき趣味に目を付けたのが60年代末期、当時の東映のプロデューサーだった岡田茂が陣頭指揮をとって始まった大奥物映画でおます。
 大奥といえば、江戸城の将軍の後宮。住んでいるのは将軍に仕える女ばかり。正妻さんを筆頭に子ども作りのために用意された若いべっぴんさんたち、彼女たちの世話をする女官から食事、清掃などの下働きの女たちで、まさに「女の園」でおます。
 その「女の園」で日夜、女たちはどないなことしてはるんやろう? と大奥には立ち入ることができなかった男ならば、誰しも興味津々。男ばかりでなく、女性も自分たちの同性が江戸城の奥深く、城外へ出るのもままならないキャリアウーマンたちがどないして暮らしてたんやろうと興味津々でおます。

 「女の園」の生態は、本格的な大奥物映画の第1作ともいえる「大奥(秘)物語」(1967年、監督・中島貞夫)であらまし描かれ、以後のこの手の映画はその時代の人気女優を並べて第1作の焼き直し作品ばかりといっても過言ではおませんが、佐久間良子、藤純子、小川知子、山田五十鈴などが妍を競い、大奥という物珍しさも手伝い、この第1作はヒットしました。映画がヒットすれば2匹目のドジョウを狙うのは映画界の常套手段で、その年のうちに製作された続編は将軍の死によって後宮勤めをリストラされた子作り用勤務の女たちがどう生きたかを、同じ中島貞夫監督、国弘威雄、中島丈博脚本によって描いた「続大奥(秘)物語」でおます。



 

 

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2013-06-27

出逢いが遅かったのね「惜春」

              惜春130626

 女房持ちの男とバツイチの女が愛し合うようになった時、常識の壁を飛び越えられない2人に待っているのは別れでしかないというのが、この1952年の新東宝映画「惜春」でおます。
 主演の男女は息子の加山雄三とは違い、端正な二枚目の上原謙と面長な顔立ちが見ていていささか疲れる山根寿子で、いずれも戦前からの美男・美女俳優でおます。

 上原謙の奥さん役に笠置シヅ子が扮し、彼女は人気歌手という設定でおますが、現実にも当時、ぶち切れたような、やけくそな歌い方で「ブギの女王」と言われた人気の歌姫でおました。しかし、僕は歌を歌わなくなった、コメディーリリーフの女優となった以降の笠置シズ子しか知りまへん。
 ほかにも、この笠置シヅ子の取り巻きにマネジャーの伊藤雄之助、作曲家の田中春男、レコード会社のディレクターの清水将夫や斎藤達雄、上原さんの同僚の清水元など、多分、この映画のプロデューサー(小川吉衛、高木次郎)つながりの出演? と考えられるような名優たちも出てきてますが、主人公たちの話にはほとんど絡まず、映画の大半が美男美女の2人によって進められていきます。

 1950年代、大映の時代劇、現代劇の人気監督だった木村恵吾のオリジナル脚本を、新東宝に出張って本人が監督もしている作品でおますが、お世辞にも美人とは言い難い笠置シヅ子を妻に持っている上原謙にしてみれば、訳ありな美人の山根寿子を目の前にすればクラッとくるのも無理ないわ~なんでおますねんけどね^^


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2013-06-15

女だって黙っていない「琴の爪」

              琴の爪130613

 真山青果の連作戯曲「元禄忠臣藏」のラストを飾るエピソードの映画化作品でおます。
 菊島隆三と若尾徳平の共同脚本を堀川弘通が監督した1957年の東宝映画で、この作品のエピソードは溝口健二監督の通し狂言映画「元禄忠臣藏」(1941、42年、前篇=興亜映画、後篇=松竹京都)の、それこそラストに出てきとりますな。

 赤穂浪士たちの老人襲撃が成功裏に終わり、浪士たちが主君の仇討ち(厳密には仇討ちとは言い難いんですけど)を果たしたということで江戸中は湧きに湧いている一方、夜闇にまぎれて46人もの男たちが徒党を組んで幕府の式典指南の高官を襲撃・暗殺したことで政治の中枢はびっくり仰天し、その処分に頭を悩ませている中、浪士たちは4組に分けられ、それぞれ大名にしばらく謹慎になります。
 浪士団の首領・大石内蔵助ら主だった幹部は肥後・熊本藩の細川家に預けられますが、内蔵助とともに細川家預けに組み入れられた若侍・磯貝十郎左衛門と彼を慕ってやまないみのという娘とのお話でおます。

 大石内蔵助には先代・松本幸四郎(のちの松本白鷗)、磯貝には二代目・中村扇雀(現・坂田藤十郎)、みのには後年、政治家のおばさんになる扇千景が扮しとります。この映画と同じ年、この扇雀と扇千景は結婚していますが、ついでに書けば細川家の家臣で浪士たちの世話役の堀内伝右衛門を扇雀の父親の二代目・中村鴈治郎が演じており、このころ、がんじろはんも扇雀さんも歌舞伎を離れた映画時代だったものの、成駒屋の共演作品ででもおます。



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2013-06-08

マクベスコンビの小品は「下町(ダウンタウン)」

             下町130608
              山田五十鈴(左)と淡路恵子

 少し前に東京在住のお友達さんから名画座で観たと聞かされ、もう一度観てみようと思っていた千葉泰樹監督の東宝映画「下町(ダウンタウン)」(1957年、脚本=笠原良三、吉田精彌)がようやく、わが「マイホーム名画座」で上映されました^^

 以前にも観たことがある1時間に満たない小品でおますが、映画というより、原作の林芙美子の短編小説を読んだのは、もう気が遠くなるほどの昔のことで、もちろん、そのころ、まだガキであった僕が十分理解しえたかというとあやしいものでおます。
 戦後の林芙美子は、あちらの世界に旅立つまでのわずか6年間に多くの作品を残しており、映画化作品としても大長篇の「浮雲」や一筆でさっと書き上げて円熟味を感じさせる「晩菊」、倦怠期の夫婦を描く「茶色の眼」(映画タイトル「妻」)、未完に終わった「めし」など、主に成瀬巳喜男監督の映画として有名でおますな。
 この「下町」も、当時、林芙美子がよく小説に取り上げていた戦争未亡人物の一種で、「下町」のヒロインは出征したままシベリアに抑留されている夫の帰りを待つ女性であり、戦争未亡人ではおませんが、戦争未亡人を主人公にした長篇「うず潮」もまた松竹で映画化(1952年2、監督=原研吉)されとります。

 夫の帰りを待ちながら、お茶の行商をして小さな子どもを育てている女と東京の荒川べりで鉄くず回収業を営む男のさりげない出会いからあっけない別れまでを描いた「下町」で主人公の男女を演じるのは山田五十鈴と三船敏郎でおます。
 この2人は同じ年の黒澤明監督の「蜘蛛巣城」や「どん底」のコンビでおます。「蜘蛛巣城」、あるいは「どん底」の製作が長期戦なんで、その合間にもう1本、山田・三船コンビで映画を、とプロデューサーの藤本真澄が考えたのかどうか、真相は知りまへん。



                

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Author:青山彰吾
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