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2017-01-21

五十鈴の背中が逞しい『赤城から来た男』

                        赤城から来た男 170121

 脚本・新藤兼人、監督・木村恵吾による1950年製作の落ち目の三度笠の男の末路を描いた大映時代劇でおます。、
 主人公の名は星越の瀧蔵。扮しているのは、この時54歳の大河内傳次郎で、中年域に達し、いささかくたびれきった観は落ちぶれた逃亡者にはぴったりでおますが、星越の瀧蔵といえば、1951年の山中貞雄の映画をリメイクした大河内傳次郎主演の『上州鴉』(監督・冬島泰三)の主人公と同じ名前でおます。しかし、新藤兼人の脚本、国定忠治を彷彿させる設定も同じながら、これはまた別のお話でおます。

 かつては手下3千人といわれ、上州・赤城を根城にしていた瀧蔵親分、やがて役人に追われる身となり、こもった赤城山を捨て絞りに絞った子分40人を連れ、旅に浮き寝をさらす逃亡者になってしまいます。子分40人を引き連れた旅はいかにも目立ちすぎ、やがて子分たちも散り散りとなり、残った数人の子分と逃亡の旅を続けております。
 ここに、男どもの逃亡の旅にくっついてトボトボ、黙々と後を付いてくる女がいてはります。名はユキ。彼女は赤城山に瀧蔵親分ご一行がこもっていた時、飯炊きに雇われた山出しの娘で、演じているのは山田五十鈴でおます。子分たちが追い払っても追い払っても瀧蔵親分のそばを離れず、文字通り、黙々と追ってきます。 何かおますな?と成り行きを見守っているとありますねん。そうやないと黙って付いてくるだけのキャラクターにスター女優を配するはずがおません。

 いかに逃亡の旅でも、瀧蔵親分も男でおます。一夜の宿をかつてなじんだ女に頼もうと女のもとを訪ねることを思いつきます。最後に残った子分3人(東野英治郎、加東大介、加藤嘉)と金魚のフンのように付いてくる山出し娘を連れて、ここからが落ち目の三度笠の瀧蔵親分、女難の旅の始まりとなるのでおます。



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2016-12-27

私家版加藤泰論への道 太鼓ドンドコ 三味に荒波ザブーン

                       鬼太鼓座161217

 今年2016年は、加藤泰監督の生誕100年に当たる年でおました。
 夏ごろから名画座の興行街では記念の特集上映が開かれ、「この際、まとめてみ~んな加藤泰映画やで~」みたいなお祭り騒ぎのラインナップで、しかし、そこどこの上映会にも観客として参加することはなかった僕…なのでおます。
 そんな中、映画が完成して以来35年、長く国内では一般公開されてこなかった加藤泰監督のドキュメンタリー映画『ざ・鬼太鼓座』が海外の映画祭(ヴェネチア国際映画祭)でプレミアア上映されるなんて椿事? もあり、それがきっかけで国内で凱旋上映され、ついには来年1月から国内一般公開されるそうでおます。
 それも35年を経たネガフィルムを元に4Kで解像度をアップし、2Kでデジタルリマスター版にするという化粧直しをしてお披露目でおます。技術は進んどりますなぁ。加藤泰監督が生きていたころには考えも及ばなかった画像・音響の復元作業で過去の映像作品をよみがえらせるという技術でおます。
 さぞや、泉下の加藤泰監督も面映ゆい思いではないかと、お察し申し上げます。

 長く一般公開されてこなかったとはいうものの、これまで加藤泰監督の映画にまつわるイベントでは上映されてきたこともある作品でおます。僕も友人の手引きで神戸まで駆け付け、ようやく目にすることができましたが、もうあれから幾霜星の時間が流れたことか!
 冬の佐渡の海にくねる荒波に太鼓ドンドコ響き渡る巻頭のシーンは予想できていたものの、途中、土地の古老にインタビューする場面では加藤泰監督のインタビュー音声が聞こえたり、『ざ・鬼太鼓座』以後に完成・公開された遺作『炎のごとく』のタイトルバックで見かけた観音像? 遊女像?の女性もチラリと挟み込まれたりして、そりゃ~食いいるように観ましたでぇ~。

 全国の先陣を切って上映する東京・渋谷のユーロスペース、ここも加藤泰因縁の映画小屋でおますな。
 加藤泰監督が消えて、およそ10年後、「加藤泰 女と男、情感の美学」と題する回顧上映があったのもココ。もちろん、当時のユーロスペースと現在のユーロスペースは場所替わりしています。
 上映の情報をかぎつけ、どんな作品が上映されるのかも分からないまま、上映初日に東海道を五十三次し、JR渋谷駅からスタコラ映画小屋に辿り着いて観た作品が『車夫遊侠伝 喧嘩辰』でおました。加藤泰の映画の中で最も面白く、加藤泰らしさに満ち満ち、そして僕の大好きな作品を花のお江戸で邂逅したことは何たる幸運!!
 この作品1本を観たきり、再度、東海道を西下のでおますが、この上映会では一日の上映回すべてを『ざ・鬼太鼓座」に当てるという突飛もない企画もあったそうで、残念ながらこの時は『ざ・鬼太鼓座』は観られずじまいでおました。

 改めて『ざ・鬼太鼓座』に出会えること、楽しみやねぇ~。


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2016-12-18

チラシを見ても映画を観たことにはならねえ37

                       チラシ田中絹代 161217  チラシ浪花千栄子 171217

 お江戸在住のお友達から、今年最後となる名画座のチラシが送られてきました。
 その中にあった日本映画の象徴的な催しが来年1月4日から神保町で始まる「没後40年特別企画 女優・田中絹代」と1月14日からの渋谷での「名脇役列伝1 浪花千栄子でございます」の特集でおます。
 片や、戦前戦後を通じて主演女優を貫いた田中絹代、片や、脇役ながら映画ファンの記憶に長く名前を残すことになった浪花千栄子のおばさまたち(僕の年代からみればね)。
 多くの人と同様、どちらも私生活では毀誉褒貶の多かったおばさまでござります。

 田中絹代特集では、日本映画初の女性監督として自身の監督作品『恋文』(1953年、新東宝)と『乳房と永遠なれ』(1955年、日活)を含む全19作品が予定されとります。
 ◎恋の花咲く 伊豆の踊子(1933年、松竹蒲田、監督・五所平之助)
 ◎非常線の女(1933年、松竹蒲田、監督・小津安二郎)
 ◎マダムと女房(1931年、松竹蒲田、監督・五所平之助)
 ◎愛染かつら前後編(1938・39年、松竹大船、監督・野村浩将)
 ◎簪(1941年、松竹大船、監督・清水宏)
 ◎風の中の牝鶏(1948年、松竹大船、監督・小津安二郎)
 ◎夜の女たち(1948年、松竹京都、監督・溝口健二)
 ◎花籠の歌(1937年、松竹大船、監督・五所平之助)
 ◎宗方姉妹(1950年、新東宝、監督・小津安二郎)
 ◎銀座化粧(1951年、新東宝、監督・成瀬巳喜男)
 ◎煙突の見える場所(1953年、スタジオ8プロ、監督・五所平之助)
 ◎流れる(1956年、東宝、監督・成瀬巳喜男)
 ◎黄色いからす(1957年、歌舞伎座映画、松竹、監督・五所平之助)
 ◎太夫(こったい)さんより 女体は哀しく(1957年、宝塚映画、東宝、監督・稲垣浩)
 ◎彼岸花(1958年、松竹大船、監督・小津安二郎)
 ◎楢山節考(1958年、松竹大船、監督・木下恵介)
 ◎サンダカン八番娼館 望郷(1974年、東宝、俳優座、監督・熊井啓)
 ◎恋文(1953年、新東宝、監督・田中絹代)
 ◎乳房よ永遠なれ(1955年、日活、監督・田中絹代)

 上映予定作品を一覧すると、よくも悪しくも(役柄がニンに合っていたかどうかの意味で)女優・田中絹代の足跡がよく分かるオンパレードで、トドメを刺すのは1974年の『サンダカン八番娼館 望郷』でおますやろか。それまで実年齢より若い役を演じることが多かった田中絹代が初めて実年齢に近い、それもきれいに化粧した役ではなく、よれよれのおばあさん役で登場してきたことに女優魂を感じたものでおます。
 その一方で、1958年の『彼岸花』あたりの田中絹代を見ていると、久しぶりの小津映画への出演だったためか、中流家庭のサラリーマンの妻という品のいい役ながら「天下の小津映画に出ているんだ」という気負いを感じてしまうのでおます。


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2016-12-17

山中映画のリメイクは『上州鴉』

                         上州鴉161120

 たまたまCS放送で観た大河内傳次郎主演、冬島泰三監督の股旅時代劇『上州鴉』(1951年、大映京都)は、山中貞雄督のトーキー2作目とされる『国定忠治』(1935年、日活京都)のリメイク作品でおました。
 この『国定忠治』は上映フィルムが失われ、もう観ることはできないのでおますが、シナリオだけは残っとります。シナリオでは『国定忠次』となっており、原作が山中貞雄、脚色が三村伸太郎の鳴滝組のおにいさんたち(当時)で、リメイクの『上州鴉』は原作が三村伸太郎、脚色が新藤兼人で、ほぼ忠実に元ネタのシナリオを再現したグランドホテル形式の映画でおます。主演はどちらも大河内傳次郎。

 大河内傳次郎扮する国定忠治が関所破りをした後、役人に追われながらも上州の田舎町に現れ、その町にある旅籠(はたご)を舞台にしたドラマでおますが、なぜか元ネタのシナリオでは国定忠治となっているのに、リメイクの方の大河内傳次郎の役名が星越の瀧蔵となっており、これは役人に追われる忠治の偽名で、最後には歌舞伎でよくあるように「星越の瀧蔵、実は国定忠治」となるんやないかと待っとりましたが、最後まで国定のくの字も出てこない映画でおました。戦後、時代劇が解禁されてからの映画でおますが、なにか国定忠治を名乗るには映画製作上の差し触りがあったんかいな? でおました。なんでやろうね?


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2016-11-05

チラシを見ても映画を観たことにはならねえ36・メイカ篇

                       チラシ 芹明香161031

 お江戸のお友達から例によって東京の名画座を中心とする映画のチラシが送られてきて、渋谷では先月末から『祝・生誕45周年!芹明香は芹明香である!』と題する特集が上映されているそうでおます。
 日活ロマンポルノ映画が誕生して今年で45年を迎えたそうで、しかし、生誕45周年とはいえ、現実には日活ロマンポルノ映画が消えたのは遥か昔のことになりますな。日本に映画が渡来し、動く写真、つまり活動写真と呼ばれ、映画が商品化された初期のころに誕生した名門・日本活動写真株式会社、つまり日活が1971年、事実上の一般映画製作から撤退し、その後、18R専門の映画会社として再出発、そのころはまだ18Rの裸映画を指す言葉として「ピンク映画」なる語句が生きていた時代で、そのピンク映画の市場を席巻していた幾多の弱小ピンク映画製作の専門プロダクションとは一線を画するため、ロマンポルノなる、ちょっとお洒落な感覚の横文字言葉を考案し、日活の裸映画は出発したわけでおますな。
 弱小プロダクションとは一線を画するとは、さすが名門・日活。腐っても鯛でおましたんやな。

 片桐夕子、山科ゆり、絵沢萌子、白川和子など日活ロマンポルノスタート時からの女優たちに遅れること数年、登場したのが芹明香でおます。遅れること数年といっても、それはわずか1、2年の差程度で、ロマンポルノ初期の女優群のひとりといってもいいのでは? 受け口気味の唇がいつも半開き状態で、投げやりな目つきの気だるそうな表情をした女の子でおました。気だるそうな表情はラリってるの? と思わせるような危なげな感じで、あれは芹明香の本来のキャラクターだったのか、それとも作られた個性だったのか、まだほんのガキだったボクにはよう分かりまへん。

 その後、芹明香は数回の刑事事件に関係し、次第に表舞台から姿を消したのでおますが、芹明香が登場したころ、彼女と同じ出身地である大学の同級生が自分と同じ高校の出身で、下級生だった彼女はそのころから目立つ女子高生だったとよく話をしていたものでおます。
 その芹明香が今回の特集上映のトークショーにゲスト出演するということで、初日だったかに行われたトークショーに駆け付けたお友達が客席から捉えたアングルの現在の芹明香の写真をメールで送ってくれました。
 ボク個人としては、こういうのってあまり好きではないんでおますな。つまり、何年も表舞台から消えていた女優が表舞台に現れるということでおます。時は残酷なもので、どんなに美女であっても、どんなにそうじゃなかった女優であっても、人間には等しく時の残酷さは訪れるものでおます。それは十分分かっていながら、かつては若々しかった女優の「今」を垣間見るなんて、受け取る自分側にとっても残酷なことで、改めて人間は必ず老けていくもので、その法則から逃れた者はひとりもいないということを痛感させられるのでおます。
 で、写真を送ってくれたお友達へのボクの返信は……

 「おちついた、ええ感じのおばはんやね」でおました。

 そのころ、ボクはもう一人の「メイカ」と対面していたのでおます。




 

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2016-10-23

私家版加藤泰論への道 これでラストかもしれない生誕記念上映

                         加藤泰パンフ101011

 来月4日から東京・池袋の名画座で、「生誕100年 加藤泰」という上映会がおますな。
 さすがに今年は加藤泰監督の生誕100年を記念した映画会がモテモテでおます。確認できただけでも国立近代美術館フィルムセンターでの特集を皮切りに京都(京都府文化博物館)、神戸(神戸映画資料館)、大阪(シネ・ヌーヴォ)と、あちらの世界に旅立った映画監督が遺した映画群が花咲き、今度の池袋での上映会が生誕記念のラストを飾る催しになるかもしれまへん。

 特筆すべきは、かつて加藤泰監督の映画が上映されると知ったら、どんなこともさておき駆け付けていたボクが、今年の一連の催しには一度も参加していないことでおます。エンジン切れを起こしたんでっしゃろか?
 冒頭に掲げた写真は、およそ30年以前、加藤泰監督がこの世から消えて数カ月後に行われた追悼上映会で、日替わりでトークショーに参加した加藤泰映画ゆかりのゲストメンバーのサインの寄せ書きでおます。
 場所は、同じく池袋の名画座。もっとも今ある名画座はその後、建て替えられたものでおますが、当時のその名画座は昔ながらの映画小屋の趣きを残した劇場でおました。当時、この名画座に関係していた友達が気を利かせてゲストにサインを依頼し、後日、ボクに手渡してくれた、ボクには期待もしていなかった記念品でおます。
 ♪時世時節は変わろとままよ~の歌詞の文句にある通り、自署のサインを遺してくれたこれらの人たちの名前を見ると、既に加藤監督のもとに参集している人も多く、あちらの世界で皆で加藤監督の「よ~い、アイッ!」の掛け声を楽しんでいるのかな?

 今回の来月4日から始まる特集上映に予定されている映画は20本でおます。

文芸坐加藤泰161026


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